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【「踊る添乗員さん」 THE・セロリ 北京空港を封鎖せよ!】 [添乗員こぼれ話]

添乗に出るといろいろなことに遭遇します。

ある意味トラブルがなかったツアーはあまり記憶に残らないので、後で思い返すと良い思い出ですが、そのときは、その状況から抜け出すために必死です。


さて、そのツアーはあるリーダーの方(オーガナイザー)が、お知り合いの方に声を掛けて組織したツアーでした。

参加者それぞれがほとんどお知り合い同士ですから、ツアー開始時から和気藹々としていて人数も20名程度と、添乗員としては比較的落ち着いて取り組めるツアーです。

私がまだ駆け出しの頃で、あまり難しいツアーを一人で任せるわけにはいけないという配慮があったのだと思います。

オーガナイザーの方はリーダーシップを持ったしっかりした方で、決めたことはメンバーに周知することも徹底され、添乗員サイドも安心できるグループでした。

さて、順調に進んだ日程でしたが、ある日の早朝にホテルの私の部屋にお客様から電話がありました。

添乗員の部屋への電話は様々です。

「お風呂のお湯がでない」「トイレの水が流れない」「スーツケースのダイヤルロックの番号を忘れてしまった」「部屋で飲んでるから一緒に飲もう」 etc.

でも、早朝から電話があるのはあまりありません。

ご高齢の方が多いので、大抵のお客様は早起きです。

ですから、中には「今日はどこへ観光に行くんですか?」なんていうこともあるのですが、その時の電話はそれほどのどかなものではありませんでした。

「は、はるさん… ちょっと来てくれますか…」

ご高齢の女性のお客様だったのですが、明らかに声が苦しそうです。

「どうしましたか?〇〇さん?」

私が電話口で声を掛けると、

「朝からお腹が痛くて…、苦しいんです。」

私は、とにかく様子を確認しようと思い、

「わかりました!すぐお部屋に参りますので、待っていてもらえますか?」


結構、同室のお客様に遠慮する方がいます。

同室の方には声を掛けずに私に電話をしてきたようですが、電話をしている声で目を覚ました同室の方がドアを開けてくれました。

かなり苦しそうな感じでしたので、同室の方に昨日からの様子を聞くと、昨日までは特に変わったところがなかったということです。

私は病気の見立てまではできませんので、ホテルのフロントに電話をして、お医者さんを呼んでもらうように頼みました。

オーガナイザーの方にも状況を電話で連絡を入れると、心配そうに部屋にやってきました。

さて、ちょうどそんなやりとりをしているところに、現地のガイドさんがやってきました。

中国のガイドさんは朝ご飯をホテルのレストランでとる場合があります。

彼もそうで、出発よりも大分早めにきてくれて、本当に助かりました。

彼に事情を説明すると、「すぐ病院に連れて行きましょう。」ということになりました。

オーガナイザーに説明すると、

「とにかく病人優先。ツアーメンバーはホテルに待機しているから、よろしく頼む。」

ということでした。

こういうとき、『オーガナイザーもの』と呼ばれる手配旅行は話が進めやすいです。

これが一般募集のツアーであれば、一般のお客様のお世話もしながらトラブル対応もしなければならずガイドと添乗員が手分けしてことに当たらなければならなかったりして難しい対応を迫られます。


とりあえず一般のメンバーはオーガナイザーの方にお任せして、私とガイドさんでそのお客様を病院へお連れすることになりました。

私がロビーまでおんぶして行くことにしたのですが、ぐったりしている「人」って重いんですよね。

酔っ払いのお世話をしたことある人は体験あるかもしれませんが、体を完全に預けられちゃうと人って重くなるんですよね。

ちょっとよろよろしながら、ロビーからタクシーで近くの病院へ行きました。

ガイドさんが急患扱いで頼んでくれたようで、すぐに診察してもらえました。

中国語が話せない私の代わりに、そのお医者さんに朝からの状況を説明したりしてもらいました。

お医者さんから診察結果をガイドさんが聞くと、私の方に向き直り、

「空港を閉鎖しなければならない事態になるかもしれない…」

なんていきなり物騒なことを言います。

私は、「え?どういうことですか?」

「どうも、伝染病にかかったらしいんです。症状が似ているらしいんですが…。ええと…、ええと、サラリ、サラリって知ってますか?もしこれにかかっていたら、空港閉鎖になるかもしれないよ。」

「ええ?サラリ?聞いたことないなぁ。日本語で何て言うの?」

「ええと。サラリ…セロリ…。」

なんか、『喉まで出かかっているんだけど』って、感じで思い出そうとしてますが、出てこないようです。

「とりあえず、病名は辞書で調べますが、とにかくお医者さんがここでは詳しく調べらないから、すぐに『伝染病病院』に行って欲しいって言ってます。どうしますか?」

えぇぇ!伝染病病院!そんなすごい病気なわけ!どうしますも何も行くしかないでしょう?」

「じゃぁ、病院が救急車で運んでくれるそうですからすぐに行きましょう。」

「わかりました。じゃぁすぐに。」

私は病院に来られて一安心していたので意外な展開に軽いパニック状態です。

今度は病院で車いすも用意してくれたので、おんぶはしなくて済みましたが、いきなり異国で救急車に乗ることになってしまいました。

伝染病病院に着くと、すぐに受付をしました。

ガイドさんが何やら説明を聞いていて、とにかく専門の先生が診てくれるから2階の診察室に運んでくれとのとこと。

救急車は受付が済むと何やら申し送りみたいなのを簡単に済ますと帰って行ってしまい、私たちが運ばなければなりません。

その間もお客様はうーん、うーんと唸っており、朝の様子より更に苦しそうです。

ガイドさんと2階に上がろうとエレベータを探しましたが良くわからず、通りがかりの看護婦さんにガイドさんが尋ねると、この病院には階段しかないとのこと。

暗い廊下の先にある階段が、万里の長城のようにそびえます

小柄な私よりはるかにがっしりした体格のガイドさんにねだるような視線を送ると、彼がおんぶをしてくれました。

2階にあがって私が運んだ車いすにお客様を乗せると、彼はかなりぜいぜいしていました。声を出すのが辛そうです。

きりっとしたベテランの女医さんがいらして診察をしてくれました。

とりあえず診察中はガイドさんと二人で廊下で待っていたのですが、さっきの空港閉鎖のことが気になって聞いてみました。

「思い出しました?さっきの病名?」

「あ、そう、さっき思い出した。コレラって言うでしょ?」

「えーーーーーーー!」

私、あごがはずれそうになりました。

だって、私、思い切りおんぶしてますし…。

コレラって経口感染が主で空気感染や接触感染はほとんどしないようですが、そんな知識がなんてありませんから、またパニックです。

「そんな…。こんなオープンな雰囲気のところで診察してて大丈夫なんですか?」

本当は、自分が感染しないか聞きたかったけど、我慢してそんな聞き方をしたと思います。

「わからないよ。でももしコレラってことだったら、たぶん帰国は無理だよ。ホテルの部屋とか入れなくなるね。」

「…。」

私は朝からの緊急事態の疲れも出たせいか、なんだか急に調子が悪くなってきました。

そんな会話をしていると診察室で先生に呼ばれてガイドさんが説明を聞くことになりました。

どうもコレラという線はないようでした。

ただ他の伝染病が疑われるから検査結果が出るまでとりあえず、隔離病棟へ入院をしてもらうことになるとのことです。

「隔離病棟…」 大変なことになったな…。

血液を採取したりいろいろされた後、とりあえず病室へ案内されました。

もう、今更気にしてもしょうがないやって感じで、どこでもついて行きました。

ベッドに横たわるとお客様はだいぶ落ち着いた様子です。

特に治療をしたわけではないのですが、女医さんの雰囲気が優しい感じで、安心されたのではないかと思います。

とりあえず、検査結果が出るまでここで休んでもらうことをお伝えしました。

「すみませんねぇ。ホントにご迷惑を。」

年配の方ってこういう時にみなさん、大抵、お詫びの言葉を口にされます。

とても辛いでしょうに、他人を気遣うってすごいなぁって思います。

とりあえず先生に安静にしていれば心配がないかどうかを確認してもらいました。

大丈夫そうなので、いったんホテルに戻ってツアーのことを検討することにしました。

しかしながら、お客様は言葉のわからない異国の病院で一人になることが心細そうでした。

そりゃぁ、そうですよね。

ツアーのことも心配でしたが、一人で心細いお客様を残していくわけにもいかず…。

普通は逆だとも思うのですが、何故か、私が病院に残って、ガイドさんにホテルに戻ってオーガナイザーに状況説明をしてもらうことにしました。

私はパニックの上、疲労により判断力が無くなっていたのかもしれません。

ガイドさんには、とりあえずこちらの状況が落ち着くまで、ホテル周辺にいてもらうなどして、午前中の観光はひとまず自由行動か何かにするように段取りしてくれるように頼みました。


さてガイドさんが行ってしまうと、特にやることもありません。

お客様は落ち着いてきて少し話をする余裕が出てきたようで、しきりにみんなに迷惑をかけて申し訳ないと詫びております。

私は安心してもらうように話しかけるくらいしかできないと、ベッドサイドでいろいろ話しかけることにしました。

「検査を受けて心配なければすぐに帰れると思いますが、ちょっと辛抱してください。」

「心配ないですよ。ここは専門病院ですからすぐに良くなると思いますよ。」

「痛くないですか?」

お客様は弱々しい声ではありましたが、朝のパニック状態からだいぶ落ち着きを取り戻して、

「大丈夫です。」とか、

「本当にご迷惑をおかけして。」とか、

そんなことをお話しされていたと思います。

そんな感じで過ごしていると、さっきの女医さんが私を呼びに来て検査結果を説明したいということです。

(やっぱり、私がホテルへ行けば良かった…)

普段ですら言葉が通じなくて苦労するのに、診断結果を聞くなんて専門的なことは私には荷が重すぎます。

そうは言っても中国は漢字の国ですから、筆談という手があります

先生と筆談が始まりました。

先生が書いた字は、「赤痢」でした。

私は赤痢って言葉は聞いたことがありますし伝染病であることは知っていましたが、どのくらいの病気か今一つピンと来ませんでした。

私は治療とか退院とかの文字を書いて、いつになるかを尋ねてみました。

「不明」という文字とともに「1週間」という文字も書かれたので、「はっきりは分からないが、1週間程度は退院にかかりそうだ。」と理解しました。

帰国予定は明後日です。どうなってしまうんだろう…。

とにかく、容態が急変して命に別条があるような重大な状態ではないようですので少し安心しました。

一通り説明を聞いて(書いてもらって)、また病室に戻りました。

とりあえず今後のことはガイドさんが戻ってきてからだということで彼を待つことにしました。

病室に戻るとお客様はスースーと寝息をたてて、眠っていらっしゃいました。

後半に続く(キートン山田風に)




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◆ 20代のほぼすべてを捧げた旅行会社での仕事。大好きな仕事でしたが数多くの失敗やトラブルにも見舞われました。そんなトラブルや失敗にまつわる添乗員の裏話をお伝え致します。
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